「イエス・キリストにある希望」(牧師:齋藤清次)

「イエス・キリストにある希望」 那覇ナザレン教会牧師 齋藤清次 希望の源である神が、信仰によって得られるあらゆる喜びと平和とであなたがたを満たし、聖霊の力によって希望に満ち溢れさせくださるように。 ローマの信徒への手紙 15: 13 昨年から始まり、今年も新型コロナウイルスは収束していません。このために一般社会 はもとより、教会においても様々な制約を受けざるを得ませんでした。目に見えないウイ ルスがすみやかに終わり、普通の生活に戻ることを祈るばかりです。 コロナのみならず、今日の世界は混乱し、内乱による犠牲者が出るなど「喜びと平和」 は何処にあるのでしょう。

 オーストリヤの精神科医ビクトル・E・フランクルは、1984 年「夜と霧」という題の本を 出版しました。これは第二次世界対戦下、ドイツの強制収容所アウシュビッツでの体験を 記録したものです。収容所に入れられた多くの人々は言葉では言いあらわせない苦難を経 験しました。大戦をとおして 600 万人が死んだというのですから大変な事でした。 強制収容所に入れられた人々は 1945 年の終戦、そして解放の日を待たずに多数の者が死んでゆきました。凍える寒さの中で、食料も乏しく、強制労働に人々は耐えられなかった のです。しかし、最後まで生き残った人がいました。著者フランクルは、この様子をつぶさに見ていました。どんなに過酷な状況の中でも、人生に生きる希望と目標のある人は苦 難に耐えて生き抜き、自由の日を迎えたが、人生に何の希望や目標のない人は収容所の中 で人生の終わりを迎えたというのです。

 では、それらの生き残った人々の希望や目標とはどんなものだったのでしょうか。ごく 単純な事柄だと著者は言います。「自分は故郷に養育しなければならない子供がいる」「年 老いた両親がいるので助けなければならない」「大学へ戻って未完成の論文を完成したい」 などの日常的なことでした。著者フランクルは、生き残った人々からこれらのことを聞き 取り、困難な収容所生活の中で生死を分けたものは、その人の人生に本当の希望や成し遂げたい目標があったかどうかだと書いています。 使徒パウロはローマ人への手紙の獄舎の中から、諸教会宛の手紙を書きました。冒頭の 聖句には、希望の源である神が、喜びと平和であなたがたを満たし、聖霊によって希望に 満ちあふれさせてくださる、とあります。私も刑務所で 32 年間教誨師して働きましたが、 明治時代に出来た監獄法は改正されて、住まいや食事などよくなりましたが、刑務所は刑 務所です。自由がありません。パウロ先生は不自由な獄舎での生活の中でも、主イエス・ キリストの恵みを語りました。「わたしたちは、聖書から忍耐と慰めを学んで、希望を持ち 続けることが出来るのです。」(ローマ 15:4) わたしたちはどのような希望や目標、そして喜びがあるのでしょうか。人生を生かす力、 それは神が私たちに与えてくださったイエス・キリストにある希望です。私たちが所有する物や金銭もそれなりに役立つでしょう。しかしそれらは出入りが激しく定着しません。 ですが、心の中に与えられた希望は信仰によるものであり、容易に失われる事はありません。

 ノートルダム清心学園理事長渡辺和子氏の著書「置かれた場所で咲きなさい」の中に、「辛い夜でも朝は必ず来る」という一文があります。「大切なのは希望を持ち続けることです」 と言っています。 わたしたちの罪の赦しのために十字架上で死なれ、三日目に死人の中から甦えられたイ エス・キリストが、信じる者と共におられ、わたしたちを絶えず励まし、慰めてくださる ので感謝のほかありません。主イエス・キリストを心から信じ、また救い主を人々に紹介 する証し人としてそれぞれ使命を果たしたいと思います。

 イエス・キリストが十字架で死なれたとき「弟子たちは皆、イエスを見捨てて逃げてし まった。」(マタイ 26:56)とあります。弟子たちは恐れと不安で、また、ユダヤをローマ の支配から独立させてくださるのはこの方だと期待してのに裏切られた思いで、部屋の戸 に鍵をかけて隠れていました。弟子たちは目標を失い、生きる喜びも見失っていたのです。 そのとき、復活の主イエスが弟子達の前に現れて、恐れている弟子に「平和があるように」 と言われ、十字架で傷ついた手と脇腹とをお見せになりました。弟子たちは喜びました。

 イエスは更に「父がわたしをお遣わしになったように、わたしもあなたがたを遣わす」と 言われました。(ヨハネ 20:19~21)

 やがて弟子たちは、主の約束の聖霊を受けて福音宣教のためにいのちをかけてその使命 を果たしていくのでした。わたしたちもこの時代に生きるクリスチャンとして福音の証人 としての役割を果たす者でありたいと願います。 「イエスは言われた。全世界に行って、すべて造られたものに福音を宣べ伝えなさい」

 マルコによる福音書 16:15